EPILOGUE
その日、アンジェリークが目覚めたのは、お昼近かった。
昨日迄の自分とは違う、新しい朝。
銀の髪を少し乱して、愛しい人が傍らで眠っている。
体の奥がけだるいのは、昨夜の悦びの名残りだ。
こんな幸せな朝を迎えることが出来るとは、ついこの間までは、想像だに出来なかった。
しかし、今は、親しい人に祝福され、夫となった、彼がそばにいる。
嬉しくて、堪らなくて、彼女はふふと笑うと、彼の輪郭を指で丁寧になぞってみた。
完璧に整った輪郭。
イタズラ心が湧きあがって、彼女は、彼の輪郭を、今度は唇でなぞってみる。
瞼、鼻・・・。
彼に教わったように、ゆっくり丁寧に。
唇が彼の潔癖そうな唇にたどり着いたときだった。
軽く羽根のように触れただけだったのに、急に深いものになり、彼に腕を掴まれて、そのまま組しかれてしまった。
「おはよう、アンジェ」
ニヤリとよくない微笑を浮かべられて、アンジェリークは耳朶まで顔を赤らめる。
「あ、起きてたの? アリオス叔父さん」
「アリオス!」
「あ、ごめんなさい、アリオス」
まだ"アリオス”と呼ぶのに馴れていないせいか、アンジェリークは、ついつい叔父さんと呼んでしまう。
「これからも、朝は、ああやって起こしてくれるんだろ?」
彼に甘く囁かれて、彼女は全身を赤らめてしまい、とうとう恥ずかしそうに顔を両手で覆った。
その姿が可愛らしくって、アリオスはついつい苛めてしまう。
「もう・・・、なんだか性格が違うよ〜、今までと」
「自分の女に、誰よりも惚れてる女に、気なんて遣いたくねえんだよ」
殺し文句だと、アンジェリークは思う。
こんなことを言われてしまえば、確かに彼女は一溜りもなかった。
互いの唇がどちらからともなく重ねられ、愛しさを伝え合う。
唇が離れ、アリオスの胸にも垂れて甘えながら、アンジェリークは幸せそうに微笑む。
「私、凄く、幸せよ・・・。やっと、あなたと本当の意味で"家族"になれたから・・・」
「だったら、あの、オバさんに感謝しなくちゃな? あれがなけりゃあ、俺たちは、おまえが二十歳までこうなれなかった」
「ある意味ね・・・」
彼女はふんわりと穏やかに微笑むと、彼の腕に体を預けた。
「----もう・・・、どこにも行くなよ? 離さねえからな」
アリオスは、彼女を力いっぱい抱きすくめると、その栗色の髪に口づける。
「もうどこにも行かない・・・。あなたが、私の"家"だから・・・」
アンジェリークは、彼の鍛えられた胸にうっとりと顔を埋め、その香りを吸い込む。
最も懐かしく、身を焦がす香りを----
「---おかえり、アンジェリーク・・・」
「----ただいま、アリオス」
二人は、今、互いの"家"を手に入れた。
この世界で、最も輝ける"家"を、二人は手に入れたのだ。
そう、"愛"という名の----

あとがき「メロドラマと私」
とうとう完結しました、ソープオペラ「WHERE DO WE GO FROM HERE」も!!
最初、書き始めたときから、このラストを考えていました。というより、最初から全部の流れを考えて、それを8回に分けて書いた感じです。
皆様の笑撃だったでしょうアンジェリークがアリオスを「アリオス叔父さん」と呼ぶのは!!
どうしようかと思いましたが、最初から、ほぼ最後まで呼ばせてしまいました(笑)
このメロドラマ、普段は"お笑い"な私にとっては、結構チャレンジでした。
展開が、本当に、一昔前のメロドラマのようで、自分でも何度か、それゆえにダレかけたことがあったのですが。メールを下さったり、BBSにご意見を下さった方のお蔭で、
何とか週一回の連載をこなすことが出来ました。(もう、週刊少年漫画並)有難うございました。
「切なさ」をテーマに、頑張ってましたが、なにせお笑いですから、上手く表現できずl歯がゆかった。
この作品の番外編が、既に二作UPしています。「EVERY BREATH YOU TAKE」(SWEET),「TOUCH ME WHEN WE’RE DANCING」(GREETING)です。
この二作は、かなりSWEETです(私、「切ない」のよりこのジャンルがさらに苦手)
そのうち、出産間近編でも書くかもしれませんが、全く未定です。
この後の、「異間人館」愛の劇場(笑)は、ある方へのメールでも宣言したように、アリオス師、アンジェ教え子の師弟物です。
ネタ帳にある仮タイトルは、「お師匠と私」です(笑)
最後に、ここまで読んでくださいました皆様、本当に有難うございました。
2000/12/13 (水) 22:33:05、tink
P.S.裏を今から書く予定で、アリオス本懐遂げちゃった編でございます。
